【ドラマ感想】御上先生

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どちらかというと社会人向けの内容で地位を築いたTBSの日曜劇場で、この御上先生はまさかの学園ドラマかと当初は興味が湧かなかった。
だが、新聞での紹介記事がその先入観とは違いそうな内容だったので初回を観たみたところ、同局の「アンチヒーロー」的な雰囲気で面白そうって思えるものだった。

これは官僚のお仕事ドラマというか、教育に関する問題提起をする社会派ドラマと言った方がいいかもしれない。
名門私立高校に教師として派遣された、文科省の官僚である御上が何をしに来たというのをミステリアスに描いている。

いわゆる学園ものみたいにありがちな荒れた生徒との対決とかそういうのは無い。むしろ頭のいい名門校の生徒との対決はありがち学園ドラマとは違う緊張感をはらんでいたし、徐々に生徒に認められていく過程もよくある学園物の熱い感じとはちょっと違っていた。

三つの軸

学校での御上の行動と、それに感化される副担任是枝の活動が主軸となるが、もう一つの軸は官僚の同僚である。
御上は同僚の槙野との競争に敗れて派遣されることになったという態度を、ことあるごとにとっている。
また御上は言動の中に現在の教育基本法への問題提起を含ませていて、ここら辺が派遣と関係しているのかなと思わせる。

これら二つ軸と並行し、新聞部の生徒が学校新聞にスキャンダルとして報告した教師同士の不倫をめぐる真相究明が絡んでくる。
スクープした生徒である神崎が初回から孤高の雰囲気を出していて、この物語の三つ目の軸の進行をしっかり導いている。若い役者に重要な役割を担わせているなぁって思ったが、しっかり期待に応えていると思う。

御上のキャラが良い

御上は一見冷たそうだが、実は論理的に生徒の自立を促すように導いて行っている。そこが小気味良く、彼の言動や行動に期待していってしまう。生徒たちも回を経るごとにそれに気づき始め、当初対立していた雰囲気がどんどん氷解していく。一番のターニングポイントは御上の兄が自殺した件を彼が語ったエピソードだが、この頃にはそういう事なんだろうなぁって想像できる内容だったので通過儀礼的な役割だろうか。

御上の目的

理想の私立進学校だと思われている隣徳学園に御上が赴任したのは、学園上層部が行っている不正の究明にあった。
それは上級国民の子弟達への裏口入学であった。それが学園理事長の古代と御上の上司である塚田の主導で行われているという真相を突き止めることができた。
対立していると見せかけていた槙野が文科省内の協力者だろうというのは何となく匂わせていたので、むしろ最後に裏切らないかという想像までしてしまった。

生徒に当たるスポットは少な目かな

御上を中心に動くストーリーなのでそこまで生徒に深堀りするまででは無いのだけど、学園物である以上生徒の問題についても適度に取り組んでいく。それらはすべて教育に関する法制の不備へと結びつくような展開となっていた。
日曜劇場の視聴者層を考えるとこのくらいが適量かも。それでもセリフのある生徒役は特徴を覚えられたので、そこは良かった。

目的は達成できたのだっけ

現在の教育行政の問題をちょっとずつあぶり出して、理想の進学校と思われた隣徳学園の不正についても証拠をつかんだ。
そして終盤さあどうするんだって楽しみにしていたが、結局裏口入学と助成金の不正受給を明るみにしたという部分に集約されてしまった。
むしろそこからだろうと思っていたのに、なんか俺たちの戦いはこれからだで終わってしまった感がある。

中盤までは面白かったのに、後半は裏口入学の証拠集めになってしまったのが物足りなかった。
あと、脚本家の思想が左派に寄っているので、何かしら日本が駄目だという広げすぎた主張を強めに混ぜるようになっていたのが余計だったかな。
教育に絞って海外とどう違うのかとか、日本に良いところは全くないのか「考えろ」ならもっと楽しめたかな。
それから、冒頭の事件はインパクトを狙っているのはわかるが、殺人事件である必要は無かったと個人的に思っている。

でも、よくある学園物と違って教育行政に関わるテーマにチャレンジした意気込みは良かったし、進学校を舞台にしていたのも新鮮だったし、変に熱くなる展開だと逆に興冷めしちゃうので、子供を持つ親として毎週興味を持って観たドラマでもあった。

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