【読書】アマテラスの暗号

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日本版ダヴィンチコードとしてAmazon上で話題になっていたらしい本書。そのことは知らなかったが、書店でたまたま文庫を見かけて読んでみた。
内容は「日ユ同祖論」をテーマにしたミステリーだ。このテーマについては本気で捉えたことは無かったが、日本の古代史には興味があったので。

さすがに人種的には本書内でも違うとしていながらも、内容の多くを占めるユダヤと日本の文化の共通点は非常に面白い。
カタカナとヘブライ語の共通点という多分鉄板なエピソードがつかみにあって、興味が俄然出てくる。
そしてメインとなるのは、ユダヤ教と日本の神話や神事との共通点。あと神事に使われる用語に、日本語では意味が分からないがヘブライ語だと意味の通じる言葉があるというもの。
これらが次々と説明される上巻の半ば以降は興味が続いて読み進められた。

それらをもたらしたのは、古代日本文化に大きな影響を与えたという渡来人の秦氏で、この秦氏こそがユダヤ人の失われた十氏族の一つに連なる一族だろうという推測らしい。秦氏は中央アジアから流れてきた民族の系譜らしく大勢日本に移民としてやってきているので、つながりはありそうだと思わせる。

一方でミステリー小説でもあるので主人公に関わる殺人事件が物語の導入にあるのだが、こちらは完全に蛇足。正直その件はいいからもっと古代日本とユダヤの共通点を教えてくれって思いながら読んでしまう。

著者のデビュー作なのか、全体的に小説としてはたどたどしい感じで読みづらい。あと文庫のページの幅ギリギリまで文字が印刷されているのでこちらも読みづらい。

これを新書とかムックで出してもトンデモ論として興味を持たれるか分からないが、ミステリーとしてなら手に取りやすいし「日本版ダヴィンチコード」とするのは正解だったかも。
ただ「ダヴィンチコード」はラングドン教授が自分で謎解きをしていくのでそのカタルシスがあったのだが、本書はどちらかというといろんな有識者から知識を浴びせられる展開が多いのでそこが物足りなかったかな。

さて、神道とユダヤ教の共通点についてを主軸に取り上げてきたこの物語。
アマテラスについての解釈が後半の主題になるが、アマテラス以外の神々をアマテラスの分身として捉え、それはアマテラスの一神教的な性質に変形させたからだという解釈が面白い。
そして最後に、最大の謎としてそもそもアマテラスって何なの?という謎も解き明かされる。
その答えは、ユダヤ教との共通点や一神教的性格という意味で、ビッグネームはこれが残っていたか、というものだった。

ちまたにあふれる日本とユダヤの共通点をまとめたような内容でもあるし、知的好奇心を刺激されて楽しめた。
アマテラスの暗号(上) (宝島社文庫) - 伊勢谷 武
アマテラスの暗号(上) (宝島社文庫) - 伊勢谷 武
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