【読書】ゴールドマン・サックスに洗脳された私 金と差別のウォール街

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ニュースアプリで以前紹介されていた本。アメリカ企業の内情を暴露した本という内容に興味を持って読んでみた。
著者はアメリカ有数の投資銀行であるゴールドマン・サックスで、女性ながら上位8%であるマネージングディレクター(MD)まで上り詰めたということなので、自分のような一般的な日本のサラリーマンでは知りえない内情がしれるだろうと思った。

著者自身は入社してすぐに「シスター・ジェイミー」と揶揄されるくらい堅物で貧しい出身だったため、お金が大事という意識が刷り込まれており、お金を貯めるためにどんどんゴールドマン・サックスの流儀に取り込まれていく様が描かれている。
だが後半、このままではいけないと思い立ち退職することになる。

これを読んで思うのは、アメリカの大企業はワークライフバランスなんて考えていなく、むしろ昔の日本にもあったような仕事人間でいるように仕向けられるのだなぁということ。部門の長が絶対の家父長的な組織で、ハラスメントと足の引っ張り合いと欲望が剝き出しになった人間関係で緊張感がずっと続いている。

海外ドラマを観ているような対立や打算みたいな関係性が繰り広げられ、ほんとにこんな関係性で仕事しているのかなって疑いたくなる世界だ。
物語性を出すために多少脚色もしているのだろうが、アメリカの企業が平等っていうのは少なくとも金融に関しては違うんだなぁって思える。

ジェイミーも昇進するための執念みたいなものがあり、プライドも高く、男社会の会社で負けん気が強い性格だったのが、ゴールドマン・サックスに染まりやすかったのかもしれない。
その過程でちょっと話のつながりが分かりにくかったり表現が回りくどい部分があったので、彼女自身が触れていない部分も多々あったのだろう。例えば一度してしまった上司との不倫の部分は、もっと深い関係になっていたのだろうがなんかつかみづらかった。

そういえば、MDになったジェイミーだが、なぜか他のMDの部下みたいな扱いになっており、役職の関係性がちょっとわからない部分もあった。

そんな彼女も優しいご主人と子供たちのことを考えて退職に向けて計画を開始する。ボーナス額とかを見ると、むしろどんだけ貯めこむつもりだったんだって思うのだけど。
そして数少ない社内の味方である部下のピートも自分の夢に向かうために退職計画を進める同志となる。
そしていよいよジェイミーが退職する決めて辞表を出すとき、味方であったピートが突然切れて彼女に当たり散らすことが起きる。
ジェイミーは理由がわからず一週間後に退職することを決めるが、すると突然ピートが彼女より先に翌日に退職するという展開が最後待っていた。
多分、いざジェイミーが退職するとなったら置いてけぼりになる孤独に耐えきれなかったんだろうなぁ。

全体的には、ノンフィクションというより経済小説というか、半沢直樹的な、またはアメリカのお仕事ドラマを観ているような感覚で楽しめる。翻訳がよいのだろうし、著者もそうとう指導を受けたのか文章も読みやすくてスラスラ読めた。

著者もあとがきで書いているが、著者が退職したのが2016年なのでそれ以降に企業文化が少しでも改善されるといいのだろうがね。
ゴールドマン・サックスに洗脳された私~金と差別のウォール街~ - ジェイミー・フィオーレ・ヒギンズ, 多賀谷 正子
ゴールドマン・サックスに洗脳された私~金と差別のウォール街~ - ジェイミー・フィオーレ・ヒギンズ, 多賀谷 正子

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