【読書】近畿地方のある場所について

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本屋に平積みされているのと中学生の娘からの情報で、この本が話題になっているらしいことを連休前に初めて知った。元はネット小説だったらしいのだが、中々怖いホラー小説だとか。
ちなみに娘は怖いからという理由で途中で放棄したので、代わりに自分が読んでみることにした。
大人だけど怖いものは苦手だけどね。

概要

いわゆるモキュメンタリー物。行方不明の記者小沢くんを見つけるための手がかりとして彼の集めた取材の資料に目を通すという趣旨だが、オカルト的な内容のインタビュー起こし、SNSのまとめ、雑誌の掲載記事とかをひたすら読んでいくことになる。
一つ一つの内容は短めだが、大体共通した事象を追っていたことを示している。
大きく分けると二つあって、一つは女性を山に誘おうとする呪いのような現象についてで、もう一つはジャンプする女についてだ。
どちらも近畿地方の●●●●●という土地にある山に関連して起きているという状況。

怖いもの苦手ではあるのだが、連休を利用して昼間読んでいたら最後まで読むことができた。

(ネタばれあり)

展開

怖いと言っても派手なものではなく、呪いのような現象について、じわじわ怖さを感じながら確認する感じ。
日本の民間伝承にある祟りのようなものの怖さを、いろんな媒体を通じて知るような。

一つ一つのネタでも大きな展開があるわけでもなく、上記二つの現象に関わることが色々なパターンで起きているといった印象。
同じような感じの章が続きすぎて全部こんな感じなら興ざめしてくるなぁって思ってしまった。

合間合間に挟まれる「近畿地方のある場所について」というタイトルの章で、小沢くんが二つの現象の原因に近づいている様子があるので、そこで話の進展を感じることができる。

正体

最後の方の章にあるいくつかのインタビュー記事で正体が明かされる。
女性を山に誘う方は、昔女性に相手にされなかった男の逆恨みがそのまま山に怨念として残って、若い女性を山に誘う怪奇現象をあちこちで起こしていたってオチだった。割と目的がストレートだった。
ジャンプする女の方は、子供が自殺した後に新興宗教にはまってその後自殺した母親の霊らしい。ジャンプの理由が子供を下ろそうとしてなら納得できたのだが、一緒に子供を育ててくれる母親仲間を探していたって最後の章で分析しているところはなんかしっくりこなかった。

その新興宗教が、女性に相手にされなかった男に関する石を祭っているところで、直接関係なくても呪いが伝播していく怖さを表していたということのようだ。

結末

この話のもう一つの伏線として、行方不明になった小沢くんを探す「私」の存在がある。
小沢くんはこの怪異の話に足を踏み入れすぎたために死んでいて、小沢くんからその話を聞かされた「私」の命も危ない。それを回避する方法はこの呪いの内容を他人に伝えることであるという、リングの呪いのビデオ的な小説としてのオチが用意されていた。

正直この部分は物語としては蛇足かなぁ。途中の取材で得た素材の部分で怖がらせるのがメインだと思うので。
ただ、蛇足と思いつつも「私」が解説するように怪異に人間の道理は通用しないという部分は納得できた。
素材の部分は怖いけど怖すぎず、怪異の正体は何だろうと考える楽しさがあった。

人間が起こした事件とかだとこの物語に求めるものとは変わってきてしまうと思っていたので、ちゃんと呪いが実在する世界でよかった。

※袋とじは怖いので開けられませんでした

近畿地方のある場所について - 背筋
近畿地方のある場所について - 背筋

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