【ドラマ感想】グレイトギフト

テレ朝の『グレイトギフト』は冬のドラマで特に話題にならず派手さは無いが、テレ朝でメインキャスト級の俳優陣をそろえていて浮いちゃうような変な人はいなかったし、ストーリーも楽しめる内容だった。
物語としては、病院内で証拠が残らない球菌による殺人事件が起き、主人公である病理医の藤巻と検査技師の久留米女史がそれを解決するために行う動きと同時にその球菌の扱いをめぐる攻防を描いている。その殺人球菌を「ギフト」と呼ぶことになる。
藤巻と久留米は「ギフト」を培養することができたばかりに事件に巻き込まれることとなる。
全体的言うと考察を楽しむミステリードラマだ。
(ネタばれあり)
ストーリーの主軸1
一つ目の主軸は白鳥の権力争いだ。こっちが主人公ではないかと思うくらい強い存在感というか白鳥の動きで物語が展開する。
初登場時こそ誠実な医師の面を印象付かせたが、自分の権力獲得と維持のために「ギフト」を使いまくる。
そしてその白鳥に従っている郡司も隙あらば白鳥を排除しようと動き出す。
藤巻は基本的にこの二人の動きに翻弄される役回りとなる。
そして本来心強い味方であるはずの元刑事神林も、娘の手術を控えて白鳥に協力することになる。
ストーリーの主軸2
次の主軸は物語中盤から起こる「ギフト」を使ったビジネスだ。証拠が残らず殺人ができるということで買い手が途絶えることがなく、白鳥は藤巻に命じて「ギフト」を増産させビジネスに乗り出す。そこで存在感を出すのが高級会員制ラウンジ「アルカナム」のオーナー杏梨だ。杏梨は著名人とのつながりが多く、表にできない商売の仲介にも携わっている。
藤巻は妻の手術を控えているので白鳥に抵抗できず「ギフト」の生産を続けながらも、逆転するための手を打つようになる。
最終話で明らかになるが、このビジネスこそが「ギフト」の事件の発端となったのだけどね。
ストーリーの主軸3
三つ目の主軸はそもそも「ギフト」を誰が病院に持ち込んだのかという点。最初の犠牲者である愛宕元総理に使ったのが誰なのかが最終話になって明らかになる。そして居酒屋店主の安田さんも同じ時期に同じように「ギフト」の犠牲となるが、これにも意味があったことも明らかになる。
この真犯人は候補が現れては違うとわかり、最後まで読み切れなかった。
キャラの安定した登場人物たち
そんなに登場人物の内面の深堀に時間を割いていないためか、登場人物のキャラクターは割かし軸からブレることは無い。
藤巻はうだつは上がらないが悪人ではない。最初は歯がゆい感じだが徐々に白鳥に対しての対策を打つようになる。おっさんだけど藤巻の成長物語でもある。
久留米女史は一貫して論理的でかつ藤巻を信頼している。
郡司は白鳥にも藤巻にも味方と思わせて自分の権力欲を満たそうと動いている。
同じように欲に忠実な本坊事務長が、この物語ではコメディリリーフの役割を果たしている。事務長は行動の目的が杏梨をモノにできることを最優先に挙げていることにブレない。口調は軽いが残酷なことも気にしないのが面白い。
真相
久留米女史が偶然作ってしまった「ギフト」を使ってビジネスを始めようとしたのが愛宕元総理だった。久留米女史は破棄して理工学研究所を去ったつもりだったがそれを後輩の奈良茉莉が解析して愛宕元総理に協力していた(この時面識がなかったのかが謎だが)。
居酒屋店主の事件は「ギフト」を使った茉莉による実証実験だった。愛宕元総理の事件は「ギフト」ビジネスに協力していた病院の前理事長が、愛宕元総理を邪魔に感じて「ギフト」を使った結果だった。つまり初期の二つの事件は別々の犯人だった。
真犯人の候補は久留米女史、藤巻の妻、理工学研究所の所長など何人か出ては候補から外れていき、予想が難しかった。
もしかしたら藤巻が真犯人で記憶をなくしているのかとさえ考えちゃったよ。
最後のシーンで杏梨が実証実験のデータを受け取る件、愛宕元総理から計画を引き継いでいるかのような暗示があるね。
ネット上では後日談があるのではという噂が渦巻いている。
感想
藤巻が正義感振りかざして暴れるのではなく静かに抵抗を始めるあたりで、もしかしたらブレイキング・バッドみたいに「ギフト」ビジネスを取り仕切る帝王で終わるのかと思ったが、それは考えすぎだったようだ。
奈良茉莉は若手女優では期待されている人らしく、ただのにぎやかしで終わるわけないと思われていたらしいので、実行犯だったのにはメタ的な推察としては納得なのだろう。
このドラマは「証拠が残らない殺害方法ビジネス」が主軸となっているので、医療ミステリーとはちょっと違うような気もする。
なんにせよ全体的にテンポもよく、展開も二転三転して思いがけず楽しめるドラマだった。


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