【ドラマ感想】ハヤブサ消防団

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23年夏のドラマの中でTBSの『VIVANT』のインパクトに隠れてはいるが、テレ朝の『ハヤブサ消防団』は堅実で充分面白い佳作といえると思う。
池井戸作品なのでまた金融絡みかお仕事ドラマかと思いきや、日常に潜む危険を取り上げたミステリーだ。
原作は未読だったが、先のストーリーを知らずにドラマを楽しみたいと思える良作だったと思う。

ストーリー

ミステリー作家の三馬太郎はふとしたきっかけで田舎のハヤブサ地区に住むことになるが、そこで連続放火事件が発生していることを知る。
田舎の人づきあいの一環で消防団に入った太郎は、連続放火事件の調査をすることになるというのがメインストーリー。
怪しい人物として田舎の土地買収をするソーラーパネル業者ルミナスソーラーが現れる。
並行して町おこしドラマの制作が始まるが、その中心人物となる立木彩がカルト教団アビゲイル騎士団関係者でここも怪しい。

キャスト

登場している俳優陣は皆安定していてキャラも立っており、総じて安心して見ていられる布陣だったのではないだろうか。
中でも主人公を演じた中村倫也はすごく自然体でそこに存在していてさすがだなと思ってしまった。

(ネタばれあり)

登場人物の感想

主人公の三馬太郎は巻き込まれ型だが主体的に動けるし、立木彩とのロマンスで目が曇るわけでもなく、もどかしく感じないのが良かった。

編集の中山田洋は山本耕史が演じているのでアビゲイル関係者かと思っていたがこれは先入観ありすぎで、実際はほんとにコミュ力高くて有能な編集者だった。

立木彩は三馬太郎とのロマンスの相手だが、初回から怪しくてただのヒロインではないことを伺わせていた。
アビゲイルからの脱会と見せかけて先兵だったところまではそうだろうなと思えたが、それだけではなくなんと教団の教祖である山原展子の後継者であるところは予想できなかった。

消防団の仲間は三馬太郎が田舎に引っ越してできた仲間で、ハヤブサの良心を担っている。
しかし団員の一人である徳田省吾が連続放火犯でしかもアビゲイル信者だった。平和な匂いがしている集団だったのでこの中に犯人がいるとは思っていなかった。
よくよく考えたら団員はどれも曲者俳優で、誰もが裏切者を演じててもおかしくない面子だな。

ルミナスソーラーの真鍋は序盤から放火に関わっていそうな怪しい人物として登場する。アビゲイルの信者であることがわかるのだが、犯罪の指示役と実行役も担っていた。独立して動いているので俺はてっきり第三者的なポジションかと勘違いしてしまっていた。

アビゲイルの顧問弁護士である杉森はいかにもカルトの幹部っぽくて、うさん臭さをうまく表していた。wikiに役者のページが無かったので長年舞台とかで活動されていたのでしょうか。

和尚の江西佑空も怪しいところがあって何か隠してるようだったが、まさか聖母山原展子を養父の虐待から匿っていたとは予想しなかった。

ストーリーの感想

消防の仕事を描くドラマかと思って観ていたら、連続放火事件をめぐるストーリー。
さらに犯人の候補としてルミナスソーラーによる土地買収が発覚する。
そしてそれが答えかと思いきや、その裏にカルト教団である聖母アビゲイル教団のハヤブサ乗っ取り計画が進行していたという流れ。
俺と同じ年代の人はオウム事件を思い返す人も多いだろうってくらい、カルト教団の怖さをうまく表している。

それらの伏線を散りばめながら、ハヤブサにじわじわ危機が忍び寄っている展開がミステリーとして楽しめた。
穏やかな生活との緩急の演出が良い。放火事件が発生した際の緊張感への切り替わり方も心地よかったし、テンポも良く毎週が楽しみだった。

ヒロインの彩をカルトの洗脳から救い出し、そのために江西佑空と野々山映子が知る過去の真実を使うところでしっかり伏線回収された。
杉森や真鍋が逮捕されてアビゲイルは打撃を受けたようだが、エピローグ的な場面でしっかり残党が生き残っているのもカルトの恐ろしさを表している。

その他の感想

ピンポイントで印象の強いシーンでいうと、野々山映子が太郎の家に入ってそれに太郎が気づくシーンとか、勘介が日常のシーンでスマホで連絡を確認し放火があったことを太郎に告げるところで緩急が切り替わるとこととか、緊張感が瞬間的に走ってよかったね。

ネットを探す限り放火犯や彩の置かれたポジションなど原作から色々変えたり味付けしているようだが、楽しめたのでドラマ制作陣の丁寧な仕事があったに違いない。

ハヤブサ消防団 (集英社文芸単行本) - 池井戸潤
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