【ドラマ感想】エルピス

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エルピス』は脚本家・渡辺あや氏とプロデューサーの佐野亜裕美氏による義憤のようなものからスタートしたらしい企画。
『大豆田とわ子と三人の元夫』を好きでよく観ていたので期待していた。

重くなりそうなテーマである死刑囚の冤罪事件を扱っており、暗いだけになりがちだけどそうならずにテンポも良く登場人物のキャラも立っており、俺は毎回だれないで観れた。
(ネタばれあり)

主役の二人

主人公の浅川恵那や岸本拓朗の弱い点やずるい点をちゃんと描いているのがまず良い。

序盤の二話はキャラクター紹介といった感じで、第三話から動き出して面白くなってきた。
証言の採取や映像を流したり、事件の本筋に本腰をいれていたからだろう。

あと、浅川と斎藤のキスシーンがちょっとした話題になっていたね。あの状況でよくできるなと。
それ絡みでついでに描くと第四話で浅川と斎藤の絡みがエロかったが、俺は女性ではないのでよくわからないが、敗北感のある中で浅川はそんな心境になるのだろうか。

眞栄田郷敦の演技を初めてみたが、あの情けない感じと緩い感じ、それと目力のある感じと面白いキャラがよい印象。
そんな彼演じる拓朗も第四話でようやく殻を破り、第五話で過保護な母親からやっと脱出して成長していく過程がよかったね。

中盤でメインキャスターに戻った浅川が守る物ができた現実路線にシフトしたため、拓朗が取材に邁進して段々刺々しくなっていくが、どちらにも言い分はあるよなと思ってしまう対比だった。
その後浅川が守りから攻勢に出ようとしたことで、壁に当たって打ちのめされていた拓朗も救われた。

その他の登場人物

主役以外の登場人物で一番印象が強いのは村井だろう。報道から左遷されてパワハラ上司となっていたが、実は特ダネへの欲望と報道への信念みたいなものがずっと残り続けていた。ドロップアウトした様子でいながらも陰で二人に協力するし、9話の最後でニュース8のスタジオに行って暴れてくる様子が、報道への熱い思いが現れていて格好いい。
もう一人のキーマンだった斎藤は事件の真相をもみ消す勢力側として序盤は存在感があったのだが、政治家への意欲を見せ始めると失速していった。
首都新聞の佐々岡記者も味のあるおばちゃんだった。

ストーリー展開

主人公の取材が主軸になるので、事件に対しての展開はゆっくりだ。
少しずつ真実が明らかになって一歩前進と思いきや、テレビ局の上層部によって潰されるという展開が終盤まで続き、真相に近づいているんだか元に戻ったのだか分からない気持ちになる。
中盤以降キャスターとして淡々と仕事をこなす浅川と、会社を退職してまで事件を追う拓朗とは接触する機会が減る。

序盤から真犯人らしき男として本城彰が出てくる。大門副総理に関わる企業の御曹司だ。
普通のミステリーならこれがミスリードで犯人は別にいるになるのだが、こちらは冤罪から被害者を救うことが目的なので犯人当てだけをするわけではないんだよね。
結局、本城彰が犯人であることが確実視されたが、問題はそれをどうやって公表するのかに物語がシフトしていった。
あれ、そういえば本城彰って本編に登場したの一回だけ?

拓朗がつかんだ大門副総理の派閥議員のスキャンダルによって冤罪事件よりさらに深い闇に切り込もうとしたが、そこで最後の壁となるのが斎藤だった。しかし浅川は彼との現実的な取引によって派閥議員のスキャンダルは報道しない代わりに、本城彰の件を報道することに成功する。
元々死刑囚を冤罪から救うのが目的だったので、本来の目的に戻ったという印象だ。全てがハッピーエンドで終わらないところも、実際の冤罪事件を調べて得た方針なんだろうなぁ。

最後のシーンで松本死刑囚が家で食事をしているシーンがあることで、当初の目的を果たしたことを物語っている。

真の主題は?

視聴率が思ったより振るわなかったのは、最初の二話ぐらいに本筋と関係なく差し込まれた現実の政権への批判のせいだろう。
ちょっと筋違いの唐突感のある映像だったし、あれで離れた視聴者は多かったはずだし自分もやめようかと思った。
あれが無ければ冤罪事件を取り扱った社会派エンターテイメントとして、もっと視聴率がよかったのではなかろうか。

エルピスが始まってすぐくらいに、業界の人が一番注目しているというネット記事を目にした。
プロデューサーの氏が経験してきたテレビ業界の描写がリアリティがあるということらしい。
もしかしたら、こういった業界の体質へ対して物申したいという内容こそが主題だったのかなという気もする。
ストーリーに練りこまれているテレビ業界の不条理みたいな面も、一般人の自分としては興味深く観ていた面もあったかな。

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エルピス ―希望、あるいは災い― - 渡辺 あや
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