【大河ドラマ感想】鎌倉殿の13人

こんな中世日本の大河ドラマを待っていた。それがこの『鎌倉殿の13人』だ。
以前『平清盛』の感想の時にも書いたのだが、陰謀と戦いの書ける脚本家の脚本で、平家物語の頃のを大河にしてほしいなとずっと思っていた。
まさに期待した通りの内容だった。
ドラマに先駆け永井路子の『炎環』を読んで、このドラマの大まかな話の流れを理解しておいた。
永井路子の本自体も、かつて同時代を扱った大河ドラマ『草燃える』の原作となっている。『草燃える』は観たこと無いが。
脚本家の三谷幸喜が海外ドラマを色々見ているらしいので、ドラマの雰囲気は今までの大河ドラマに比べて今っぽく仕上がっている。
三谷幸喜が『ブレイキング・バッド』の名前を挙げていたらしいが『ゲーム・オブ・スローンズ』らしさもあると思う。
平安末期から鎌倉時代って、大体頼朝挙兵から義経の最期で終わってしまうし、教科書でも頼朝後の展開はわりとあっさりしてしまう。
だが今作ではあまり印象の無かった鎌倉幕府創立後の権力闘争を、じっくり楽しめる物語となった。
北条義時
ストーリーの主軸は北条義時が頼朝の弟子みたいなポジションから、執権として最高権力を握るまでのサクセスストーリー。
序盤はまたいつもの大河主人公っぽく綺麗事を言っていて大丈夫かなと思いきや、徐々に権力を握るために非情な決断をできるようになるので安心した。
そして、鎌倉幕府が坂東の独立政権樹立を目指していたという目的にしてくれたので、さすがこの時代を好きだと公言する三谷幸喜だなと、そこも安心した。
義時は悪ではなく、鎌倉を西から守るために冷徹になっているのが周囲に理解されないでそれを背負って行く孤高のヒーローとなっていた。
そして、ちゃんと主人公が死ぬシーンを描ききったことも素晴らしいと思う。
北条政子
北条政子が尼御台から尼将軍への成長物語の面もあった。幕府のアドバイザー的な立場になっても現実と理想の間で揺れていて、これがあの尼将軍になるんだろうかって歯がゆい状態が続いたが、47話の演説でやっとその本領を発揮した。
そして何かやってくれると思っていたが、なんと義時の引導を渡す役割になろうとはね。『太平記』の最終話を思い出した。
源平合戦
ここは後半始まる権力闘争のためのフリみたいなものだ。
この辺りで印象的だったのは義経の描写だろう。今までよく描かれていた悲劇のヒーローではなく、エキセントリックだけど合理的な軍人として存在感があった。
権力闘争
教科書で名前と公暁のエピソードしか出てこない二代目、三代目の将軍について、かなり時間を割くことになったのは画期的だった。源氏としては他にも頼朝の弟である阿野全成をうまく印象付けたよなぁ。
特に好印象を与えるわけでもない歴史上の人物に愛着を持たせるのは『新選組!』の時の山南先生にも通じる描かれ方かな。
梶原、比企、和田の話なんて教科書だと「ふーん、内輪もめばっかりだな」的になっちゃうけど、義時がライバルを排除するための動機付けを物語として描いているのは楽しめた。
女性陣
今までの三谷脚本の大河ドラマでは、いまいち女性陣のパートがつまらなかったが、今作ではキャラの味付けが濃くてクセが強く、牧氏筆頭にこの時代の女性陣が魅力的に描かれているのも良い。
義時の死因を伊賀の方の毒殺説に取っているからだけではないだろうが、のえが登場からずーっと性悪顔でもなんか軽い声で、ちょっとミスキャストでは?という気になった。逆になぜ義時はこれに惹かれたのだろうって考えちゃうくらい。
まとめ
初回で好きなシーンがある。善児が頼朝と八重の子供を消すシーンだが、善児が川岸で子供の着物だけを持っている。そしてそれを見た義時が大きく目を見張る場面だ。直接手をかける映像ではなく事後の様子で何が起きたかを悟る演出にゾクゾクした。
長い時間かけているお陰もあるが、コミカルな描写でほぼ無名だったこの時代の登場人物に個性を与えて判別しやすくしたのは、間違いなく脚本あってのことだろう。もちろん役者陣の個性もあってのことだと思うが。
承久の乱、一回分まるまる使ってくれるのかなと期待したが、駆け足だったのでそこだけが不満かな。
それ以外は日本の中世を楽しませてもらったので、満足のいく大河ドラマだった。


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